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音楽の記憶。

 

 

 

 

 

アンサンブルコンテストといえば。
中学生の時は、どのタイミングかも何も覚えてない、先生に渡された曲をよくわからず…ただがむしゃらに練習して出てたという記憶。
その曲が好き、というわけでもないし、「全国大会」という形のみえないぼんやりした謎の目標にならない目標に向かっていたわけだ。

中学1年の時は、バリトンの先輩がアルト1になり、私ともう1人はバリトンを吹いたことなかった(二人とも背が低かった)ので、AATの編成に。
曲は今よりもアンコンの楽譜が充実していなかった。
どういうルートでそうなったのか全く分からないけど、ヴィヴァルディの春になった。

吹いてみれば知ってるメロディだったし、演奏するのが嫌だと思った記憶はない。どんな練習をしてたか…なんかは何も記憶がないけど、コンテストの前日あたりに黒板で3人で「全国大会!」ってこれでもかと派手に書いたのだけは覚えている。

そして初めてたった3人だけで、いつも吹奏楽という大人数で乗っているステージに踏み出した、その時のやたら熱く感じる照明や、演奏し慣れてない制服の着心地、ローファーの滑る履き心地なんかだけは、その時の高い緊張感とともに頭の片隅に置かれているのだ。

 

 

 


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中学2年生の時。私は前の年のアンコンで見かけた「ソプラノサックス」に尋常じゃない憧れがあった。
その時のパートの人数はまた3人。1年生の子は体が華奢で、バリトンが吹けなかった。
アンコンでの曲はマイヨのトリオだった。
前にぐりんれいの動画で演奏したけど、ATBの編成の曲だ。でも渡された楽譜はSATの編成だった。

私がソプラノやりたいとわがままいったから(だと思う。記憶がないけどそんな気がする)、そして1年生の身体の調子もあり…マイヨのトリオの楽譜を先生がSAT用に書き換え、それをやることになったんだと思う。
昔のアンコンだからそんあのもまかり通っていたのだろうか…
中学生はそのあたりの事情なんて知る由もなく。


今私が先生の立場なら、マジで書き換えなんてやりたくない。大変すぎるよ。おとなしくAATか、SABの楽譜探すわ。当時の先生はすごすぎる。

 

 

 

ここでもどういう練習したかは何も覚えていないけど、とにかくこの曲を演奏するのが辛かった、という記憶はある。
そもそも曲が難しかったのもあるけれど、なにしろ吹きなれていないソプラノを演奏するのが辛かったんだと思う。

 

 


その年のアンコン小松地区大会の会場は、市内のどこかの中学校の広い部屋だった。
天気が悪くて昼でも暗い部屋だった。
先輩がいないから…とやたらスカートを短くして高めのツインテールに結び、他の学校の同年代が、無感情そうな視線を送る重苦しいステージのなか、本番はがむしゃらに楽譜だけをみている私の視界の映像だけが、頭のなかに残っている。

当時強豪校だった、別学校のサックスでトップを吹いていた女の子のストラップが、まぶしい赤色だった事を思い出すと同時に、理由のない「くやしさ」に似た感情が思い出されるのだ。


この曲に関してやたらと記憶が多いのは、自分が大人になってマイヨのトリオに触れられたからだと思う。
今演奏すれば、マイヨは美しく、面白く、いい作品だと思う。

その「いい作品」という感じる理由にはきっと、
こどもの時に演奏し、大人になってまた触れるという体験だけが持つものなんだと思う。



 

 

 

 

 

 

高校1年のアンサンブルコンテストは、中学校のときと違い、
市内の中学校で一斉にやる「小松地区大会」はなく、校内予選をして残ったグループが、加賀地区大会に出られるというシステムだった。
(つまり「小松地区大会」は石川県のアンコンの正式な最初の大会=加賀地区大会出場のための市内独自の予選システムだったわけ)。

曲はドビュッシーの「弦楽四重奏曲」の1楽章だった。先生に何曲か聴かされて、みんなでこの曲を選んだと思う。
その時はまあ、よくわかってなかったっていうのもあるけど…今思えばサックス四重奏でドビュッシーはなかなか勇気のある選曲だ。今やるにも難しくてヒーヒー言うと思う。
曲は美しくて今でも大好きだ。後半の2パートのメロディーがユニゾンになるところとか特に。知らない人はぜひ原曲を聴いてみて欲しい。


なにかとりわけて記憶があるわけじゃないから割愛する。
ただ、校内予選は予選枠ギリギリで落ちた。それだけは残念だったな。



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高校2年。私にとって人生最後のアンサンブルコンテストだ。
この時は「サックス四重奏のオリジナル作品を演奏する」ということに多大な憧れを抱いていた。
私の2個上の先輩たちがデザンクロで北陸大会(全国大会の一歩前の大会)までいって、そのVHSを見てからやりたいなぁとずっと思っていたのだ。

先生が出してきたのはバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」。音出しはしたけれど、私はどうしてもカルテットがやりたくて、アラン・ベルノーの四重奏曲をごり押しした。なんでそんな難しい曲にしたんだろう。他にもいろいろあるのに。
今ならバルトークを選ぶだろうな。名曲だ。


当たり前だけど、先生はお怒りだ。
「多分校内予選通過も無理だと思うけど、勝手にすれば」みたいな、ほぼ見捨てらるような感じでその曲をやることになった。


難しすぎて譜読みの段階で皆ヒーヒーだったけど、なんとなくわかってきたらだんだん楽しくなるものだ。
そして、努力のかいあり校内予選を通過した。

本番はめっちゃくちゃ響くホールで、演奏するのがマジで怖かったという記憶がある。
終わったあとには先生に、
「正直演奏がしあがることすら無理だと思ってたけど、よくやったよ。お疲れ様」
と、裏出口のところで言われたのを覚えている。

最後の真冬の大会が終わった。

 

 

 

 

 

 

時は流れ、私の最後のアンコン出場から約10年がたとうとしている。

いまだにサックスを続けているという事自体、当時の私からしたら驚きだろうが…「サックスアンサンブル」という青春時代を彩るカタチをいまだにできるということは、嬉しいことだろう。

今から初めてアンサンブルコンテストに出る、そしてこれが最後の曲になるという人もたくさんいると思う。

その時に演奏する曲は楽しかったり、辛い記憶しか残らなかったにしても、こうやって大人になってそのメロディーの断片に触れるだけでも、その時の映像や様々な感情を思い出させるものだ。
今またその曲に触れる機会があれば、こどものころとはまた違う世界が見えてくる。音楽とは、面白いね。


8/17 そんなアンサンブルコンテストに向けたコンサートをします。
もう曲が決まってる方も、今絶賛探し中なあなたも。はたまた、青春時代を思い出したい方も。
素敵な一曲に出会えるかもしれません。

三重奏~八重奏まで、さまざまな形態で素敵な仲間と演奏できるのは、こどものころには思いつかなかっただろうな。

記憶の一部に残るメロディーを、ぜひ探しにきてね。

 

 

 

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2023/8/17(木)
アダムとぐりんれい アンコンコンサート
スペースDo(管楽器専門店ダク地下)
開場17:00 開演17:30
チケットはこちらから。当日生配信もあります!